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不育症に関する先進医療

2025年7月1日更新

 先進医療については、平成16年12月の厚生労働大臣と内閣府特命担当大臣(規制改革、産業再生機構)、行政改革担当、構造改革特区・地域再生担当との「基本的合意」に基づき、国民の安全性を確保し、患者負担の増大を防止するといった観点も踏まえつつ、国民の選択肢を拡げ、利便性を向上するという観点から、保険診療との併用を認めることとしたものです。 また、先進医療は、健康保険法等の一部を改正する法律(平成18年法律第83号)において、「厚生労働大臣が定める高度の医療技術を用いた療養その他の療養であって、保険給付の対象とすべきものであるか否かについて、適正な医療の効率的な提供を図る観点から評価を行うことが必要な療養」として、厚生労働大臣が定める「評価療養」の1つとされています。 具体的には、有効性及び安全性を確保する観点から、医療技術ごとに一定の施設基準を設定し、施設基準に該当する保険医療機関は届出により保険診療との併用ができることとしたものです。(厚生労働省HPより)

現在、不育症に関して実施されている先進医療には以下のものがあります。
抗ネオセルフβ2グリコプロテインⅠ複合体抗体検査
流死産検体を用いた遺伝子検査

各先進医療の実施医療機関は厚生労働省HPよりご確認いただけます。

適応症

不育症(流産(化学流産以外のものに限る。)の既往歴(二回以上のものに限る。)を有するものに限る。)

技術の概要

不育症は不妊症と異なり、妊娠はできるが流産や死産を繰り返し、生児を産むことができない病気である。日本では、不育症患者が推計140万人いると考えられており、少子高齢化が進む日本において克服すべき重要課題である。しかし、不育症患者の半数以上は原因が不明で、治療法がわからないことが多いのが現状である。 先行研究において、脳梗塞のような重要な臓器の血管に血の塊が詰まり生命を脅かす血栓症や、流産、妊婦の生命を脅かす妊娠高血圧症候群などの病気を引き起こす抗リン脂質抗体症候群の原因となる全く新しい自己抗体(抗β2グリコプロテインIネオセルフ抗体)が発見された。 不育症と抗β2グリコプロテインIネオセルフ抗体の関係については、2019~2021年度の日本医療研究開発機構(AMED)成育疾患克服等総合研究事業「不育症、産科異常に関わるネオ・セルフ抗体の研究開発」において、臨床研究が行われた。この臨床研究において、不育症の女性227人について抗β2グリコプロテインIネオセルフ抗体を測定した結果、52人(23%)の患者で陽性となった。不育症における抗β2グリコプロテインIネオセルフ抗体陽性の頻度は、不育症の原因を調べた他の検査(子宮形態異常、甲状腺機能異常、カップルいずれかの染色体異常など)の中で最も高く、抗β2グリコプロテインIネオセルフ抗体が不育症を起こす重要な原因になっている可能性が示唆された。また、この227人の不育症患者のうち、既存の不育症検査では原因が判明しなかった患者は121人おり、このうち24人(20%)が抗β2グリコプロテインIネオセルフ抗体のみが陽性となった。 今回、抗β2グリコプロテインIネオセルフ抗体の保険収載を目指して、抗β2グリコプロテインIネオセルフ抗体の有効性を示すことを目的とした多機関共同臨床研究を、先進医療制度(先進医療A)として実施することとした。

 

適応症

自然流産(自然流産の既往歴を有するもの)又は死産

技術の概要

1) 対象 ・過去に1回以上の流産歴があり、今回妊娠で臨床的に流産と診断された患者。子宮内に 流産胎児、絨毛が残存している場合、または、体外に排出されたが流産胎児・絨毛を回収できた場合。 ・今回妊娠で臨床的に死産と診断された患者。子宮内に死産胎児、絨毛が残存している場合、または、体外に排出されたが死産胎児・絨毛を回収できた場合。

2) 胎児(胎芽)・絨毛の採取 採取方法は下記の a)あるいは b)の手順にて行う。 a) 流死産物が体内に存在する場合 体内にある流死産物(胎児(胎芽)・絨毛)を子宮内容除去術(流産手術)、分娩誘発術または帝王切開術により採取し、絨毛組織または胎児組織・胎児成分のみを分離する。 b) 流死産物が体外に排出された場合 体外へ排出された流死産物(胎児(胎芽)・絨毛)の組織から、絨毛組織・胎児成分のみを分離する。

分離した絨毛・胎児組織の一部を解析施設に移送し、NGS法にて解析する。

3) 検査・解析 分離した絨毛・胎児組織の一部を解析施設であるタカラバイオ株式会社の衛生検査所に 移送し、核酸抽出を行う。抽出核酸から Embgenix TM PGT-A Kit を用いて全ゲノム増幅、DNAライブラリーの調製後、次世代シーケンサー(MiSeq System)を用いて塩基配列を決定する。得られた塩基配列データから Embgenix TM Analysis Software を用いて染色体の数的異常、不均衡型構造異常を検出する。 尚、分離した絨毛・胎児組織の一部を染色体G-banding法にも提出し、結果を比較する。

4) 検査結果の判定と報告 (1)常染色体、性染色体のコピー数に有意の増加、減少が検出されないものを染色体正常核型と判定する。 (2)解析結果を研究実施施設にて患者に説明する。染色体構造異常(転座など)が判明した場合は、患者及びそのパートナーの染色体検査(G-banding法)を予定するが、その際には遺伝専門医などによる遺伝カウンセリングを実施する。

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